現代人の正しい眠り

あなたはこれまでの人生において、一度でも真剣に枕について考えたことがありますか。今晩、あなたが大切な頭を預けようとしている、その枕が、あなたのひと晩の睡眠を、明日のための体力や精神力を、そしてこれからの長い人生まで左右する、きわめて重要なアイテムであることをご存じでしょうか。

正しい睡眠は、人間の心と身体の健康維持に不可欠です。現代人は「健康を手に入れるためなら死んでもいい」というほど、健康志向が強いように思います。禁煙やダイエットはもちろんのこと、自然食品やサプリメントの摂取に余念がなく、日曜日ともなればジョギングで汗を流し、スポーツクラブは体力維持を気づかう中高年の男女でいっぱいです。

しかし、そうした努力のほとんどは起きている間におこなうこと、つまり多くの方々は覚醒状態における健康づくりばかりを心がけているように思えてなりません。私は、そういう光景を目にするたびに、いてもたってもいられない気持ちになってしまいます。ほんとうは、正しい睡眠こそが大切なのに……。

近年の睡眠研究により、睡眠状態こそが心身の健康のカギを握っていることがわかってきました。枕の話を始める前に、まずは現代人の睡眠をめぐる状況や、睡眠のメカニズム、そしてなぜ心身の健康に正しい睡眠が必要なのかについてお話ししましょう。

2003年3月におこなわれた国際睡眠疫学調査によると、日本人の約20パーセントにあたる2400万人が睡眠障害に苦しんでいると言われます。毎晩毎晩、五人に一人が眠れぬ夜を過ごしているとすれば、たいへんな話です。インターネットをはじめとする新しいメディアや深夜営業の店舗やレストランが増え、昼夜の別のない二四時間稼動型社会とは、眠りたくても眠れない社会のことなのでしょうか。快適至便な人工環境において、人間は本来の生理的な能力や生活サイクルを失いかけているのかもしれません。

人間は、生きるためのもっとも基本的な感情である「情動」に基づいて、食べる、眠る、排泄する、そして子孫を残すための行動を起こします。

あなた白身の、最近の日常生活をちょっと振り返ってみてください。空腹を感じたら食べ、眠くなったら自然に眠るという生活をしていますか。十分な子孫を残すための性行動をしていますか。

現代社会においては、そんなあたりまえの行動にまで、社会的な条件や人間独特の都合によって、さまざまな制約がかかっているようです。おなかがすいたら食べる、眠くなったら眠るというのは生き物として当然な欲求なのに、無理やり合目的な理屈をつけて我慢してしまうことが多いのです。

なにも21世紀の現在、原始人のような生活をしろと言うつもりはありません。快適さや合理性を追求するごとがすべて悪いと言うつもりもありません。けれど、「動物である人間」としての、自分本来の姿を忘れないでください。疲れたら休息する、夜になったら十分な睡 眠をとる。それでこそ、私たちの心身は健全な状態に保たれ、新たな活力が満ちてくるのです。

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  10. 現代人の正しい眠り
    正しい睡眠は、人間の心と身体の健康維持に不可欠です。現代人は「健康を手に入れるためなら死んでもいい」というほど、健康志向が強いように思います。禁煙やダイエットはもちろんのこと、自然食品やサプリメントの摂取に余念がなく、日曜日ともなればジョギングで汗を流し、スポーツクラブは体力維持を気づかう中高年の男女でいっぱいです。

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