枕は、一度、高価なものを購入すれば、一生使えるというたぐいのものではありません。あなた自身の体格や体型が少し変化すれば、適切な高さも少しずつ変わります。また、寝具や就寝時の衣類によっても、高さは微妙に違ってきます。だから、いつも快適な状態で眠りたいと思うなら、そのときどきの体格や睡眠環境に合わせて、つねに調整したり、交換したりすることが必要です。
まずは体格や体型の変化にともなう調整についてお話しします。一年に5センチも6センチも身長が伸びる子どもと違い、大人の場合は通常、体重変化だけを考えればいいでしょう。5キロ大ったら枕を5ミリ高くし、逆に5キロ痩せたら枕を五ミリ低くする。これが基準です。そのため、私たちの整形外科枕も特殊ウレタンほか多層構造で、厚さ5ミリのシートを重ねることで微調整できるようになっています。
「首の長さが変わるわけでもないのに、なぜ?」と思われるかもしれません。しかし、肉づきが変われば、上向きの場合の背中の厚み、横向きの場合の肩から腕にかけての厚みも変わります。やはり枕の高さは変えなければなりません。
ただし、妊婦さんは例外です。体重増加は同じ5キロでも、下腹部から腰の変化が大きいだけで、上半身や腕回りの変化は案外、小さいためです。
一方、子どもの場合は、身長と体重の両方に変化が生じますので、さらにこまめな調整が必要です。身長の伸びこそは、骨格の成長変化だからです。身長がぐんと伸びる成長期には、肩幅を形成する左右の鎖骨も、腕の骨も、どんどん大きくなります。つまり、横向きで寝る場合の適切な枕の高さも変わっていくのです。
こういうお話をすると、「子どもの枕にも気をつかわなければいけないの?」と質問されることがあります。もちろんです。子どもの場合は、大人と比べて頚椎の神経が柔軟性に富んでいます。本来なら、寝姿勢が少し悪いくらいで首位肩が痛むこともありませんし、体調不良にもなりません。しかし最近では、ゲームのやりすぎや運助乍足などが原囚で、小学校高学年か肩こりのある子どもたちをよく見かけます。そのようなケースでは、大人と同じように、寝具が不適切だと朝の寝違えや首の痛みが出現しますので、やはり枕の調整は必要です。
次に、睡眠環境の変化にともなう枕の調整について考えてみましょう。
敷物の変化としては、ベッドを新調してマットの硬さが変わったとか、逆に長年使用している布団が徐々に沈み込みを起こした、畳に布団敷きからベッドに替えた、冬になって温かい羽毛パッドを追加敷きすることにした、などというときに要注意です。
軟らかい敷物では、身体が大きく沈み込かのに比べて頭部の沈み込みが小さいので、相対的に枕が高く感じます。反対に敷物がそれまでより硬くなれば、身体の沈み込みが小さくなるので、枕が低く感じます。どちらも身体に影響が出ない程度ならかまいませんが、首や腰に違和感かおるようなら枕を見直すほうがいいでしょう。
オーダーメイドやセミオーダーで購入した枕を自宅に持ち帰ったときも、使用感を確認する必要があります。フィッティングをおこなったときの敷物と、自宅で使っている敷物とで、硬さや感触が違う場合か1 るからです。
最後に、忘れてならないのがパジャマや寝巻きです。冬場になると、寒いからといってパジャマの上に厚手のセーターやフードつきのトレーナーを着たまま寝てしまう方がいらっしゃいます。なかには、防寒用のハイネック型羽毛ベストを着込んで寝る方までいるようです。セーターやベストを着て寝れば、たしかに寒くはないでしょう。しかし、首回りにはかなりの圧迫となります。また、太ったときと同じように上半身の厚みが増すので、相対的に枕が低くなってしまうことかあります。
こうした変化のほか、交通事故などでむち打ち症になったときや、加齢で腰が曲がり始めたときにも、やはり枕の高さを調整することは必要です。「枕は一生モノではない」ことがおわかりいただけたでしょうか。
正しい枕選びの絶対条件は、一に高さ、二に浮き沈みのない「フラット構造」、三に適宜調整。最低限、これらの条件を満たしたうえで、リラクゼーション効果や抗菌・消臭効果といったプラスαをもつものを選ぶようにしてください。そうすれば、大きな失敗はないはずです。