症状別 正しい睡眠


不眠症で睡眠薬を飲まないと不安な方への枕選び

Bさんは五年ほど前から不眠症を自覚し、精神科で「神経症性不眠症」と診断されました。睡眠薬と精神安定剤を処方され、以降は薬を服用して眠る毎日。しだいに、薬を飲まなければ不安で床につくこともできなくなってしまいました。

ところが、ようやく眠れたと思っても、夜中に何度も目覚めてトイレに行くし、隣で寝ているご主人に揺り起こされることもあります。いびきがひどいうえ、しょっちゅう呼吸が停止してグツという変な声を出すためです。ご主人にしてみれば、「このまま息が止まってしまうのではないか」と心配なのでしょうが、そんな話を聞かされればBさん自身も不安が増すばかり。恐怖さえ覚えて、ますます眠れないとおっしやいます。

日中の眠気も強いので、Bさんは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を疑い、専門病院でひと晩泊まり込みのポリソムノグラフィー検査を受けました。その結果、医師から「たしかにSASの発作はあるが、健康保険が適用となる持続性気道陽圧呼吸(CPAP)を装着するほど重症ではない」と説明されました。要するに、診断は決定したけれど、治療法がないということです。

医療機関によっては、SASの患者に横向きで寝ることを指導するところもあります。上向きで寝ると無呼吸発作が起きやすいと考えられているためです。Bさんも抱き枕を使って、できるだけ横向きで寝るように努力していました。しかしたいした効果はなく、やはり毎晩のように発作が起こります。

一方、整形外科的には、就寝中に肩や腕が痛むだけでなく、朝起きたときから肩こりゃ頭痛がありました。寝違えを起こすこともよくあるとおっしやいます。そこで、通院していた整形外科の担当医(後述する枕診断土のひとり)が「枕を替えれば睡眠の賢が変わるかもしれない」と考え、Bさんの体格や自宅の睡眠環境も考慮したうえで整形外科枕の計測をしてくださったのです。

整形外科枕を使い始めて2週間ほどたったころ、Bさんから私のもとに、肩こり、いびき、無呼吸発作、不眠の4つの症状が軽快したというハガキが届きました。

「新しい枕を使い始めた夜から、いびきが静かになったと家族に喜ばれました。無呼吸発作もわからなくなり、ゆっくり眠ることができます。それよりびっくりしたのは、依存症のような状態になっていた睡眠薬をやめることができたことです。未来が開かれた思いがいたし
ます。これまではいびきが気になり、お友だちと旅行に行くこともできませんでしたが、これからは枕持参でどこへでも行きたいと夢をふくらませております」

複数の原因がからみ合って起こっていたBさんの不眠症が、枕ひとつで解消した事実には、計測した整形外科医も、枕を開発した私自身も驚かずにいられませんでした。Bさんは、ぐっすり眠って、心身ともにすこやかに目覚めることの重要性を、身をもって教えてくださいました。とても思い出深い患者さんです。

 


偏頭痛で、朝がつらい方への枕の選び方

「枕を替えたら、翌朝から頭痛亥肩こりも嘘のように消えてしまった!」

「朝までぐっすり眠れるようになりました。あの不眠症はいったい何だったの?」

「ぐっすり眠れた朝は、気持ちが晴れ晴れしてやる気が起こるから不思議です」

こうして並べてみると、陳腐な広告のキャッチフレーズのようですね。でも、私たちが枕調整をおこなった患者さんや、整形外科枕を提供した会員から、同じような驚きの言葉がたくさん寄せられています。

ここでは、枕を替えることによってすこやかな眠りを取旦戻したコー人の方々のケースをご紹介します。「自分の症状に似ている!」と思われた方のために、簡単なワンポイントーアドパイスも付記しておきます。

Aさんは「ひどい偏頭痛があるうえ、朝か亘月がこって起きるのがつらい。何もやる気が起こらない」と訴えて来院されました。これは、たいへんポピュラーなケースです。

Aさんは、毎朝、一時間以上も高速道路を運転して通勤しています。だから、会社に着いたことには一層肩が凝って、バリバリの状態。そのうえ、頭が重く、吐き気や不快感をともなうこともあるとおっしやいます。しかし、たくさんの部下をもつ管理職の立場では、朝から疲れた顔を見せるわけにもいきません。さぞやつらい毎日だったことでしょう。

Aさん自身は、そうした不調の原因を偏頭痛だと思い込んでいました。しかし、「頭痛が起こる前に、目の前に白いちらつきが見えますか? 肩こり聖肩の張りはいつ起きるのですか?」と聞いてみると、「ちらつきはありません。肩こりは一日中ですが、朝がいちばんひどい」という答え。頭痛の正体は偏頭痛ではなく、頚性頭痛の疑いが濃厚です。

頚性頭痛とは、首の筋肉の緊張が引き起こす頭痛で、その原因は頚椎の変形やヘルニアなどの疾患、あるいは事故によるむち打ち症などで一時的に頭が痛む人もいます。しかし私か知るかぎり、いちばん多い原因は枕の不適合です。

一方、肩こりは事務職や細かい手作業をする職人さん、パソコンを長時間使用する人にとっては、職業病とも言うぺき症状です。しかし、そうした首位肩の緊張を自覚すると同時に頭痛が上じるケースでは頚性頭痛が考えられます。しかもAさんは、いちばん楽なはずの朝
にひどい肩こりを感じている。やはり枕不適合による頚性頭痛を疑うのが自然でしょう。

私はAさんのために、整形外科枕を作成しました。二週間後、ふたたび来院されたAさんに様子をうかがってみると、まあ、どうでしょう。にこにこして、聞き返してくるのです。「どう、先上。何か変わったと思いませんか?」

「あれ……、そういえば、もしかして少し痩せましたか? なんだかおなかのあたりがへこんだみたい」

「わかります? 体調がよくなったおかげで、やる気が出てきたんです。さっそくダイエットを始めたんですよ」

なんと、Aさんは枕を替えた翌朝から元気になったため、部下と一緒に昼休みのウォーキングを開始。二週間で三キロの減量に成功したというではありませんか。これには、枕調整をした私のほうが驚いてしまいました。

しかし、このエピソードには後日談があります。三ヵ月ほどたったころ、AさんからEメールが入りました。

「枕を替えた当初はあんなに快適だったのに、どうも最近、首のあたりがすっきりしないのです。なんだか枕が以前より高く感じるのですが……」

すぐにピーンときて、返信を送りました。

「Aさん、もしかしたら、ウォーキングとダイエットを続けた結果、体重も減少を続けているのではありませんか?」

想像したとおりでした。Aさんの体重は、計測時と比べて6キロも落ちていたのです。さっそく再計測のために枕持参で来院してもらいました。やはり枕を5ミリ低くする必安がありました。

「あ、これこれ。これが最初につくってもらった枕の感覚だ。首がよわっと軽くなるからわかるんです。枕って、ほんとうに微妙なものですね」

満足げなAさんの笑顔を見ると、たしかに少し頬のあたりがこけているようでした。